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Uzi(0)=p。δ/2Gk (3)
となる。すなわち、地盤表面の水圧p。が大きいほど、地盤の土のせん断弾性係数Gが小さいほど、土の減衰定教δが大きいほど、そして周期が長いほど大きくなる。したがって減衰係数は、ρwを水の密度とすると、
D=−ρwgδ/(4nGcosh2kh) (4)
となる。ただし、このGやδはひずみによって変化するので、そのひずみレベルでの値を使う必要がある。
この式では、地盤が柔らかく減衰定数が大きいほど、そして波長が長く水深が小さいほど波高減衰が大きいことになる。しかしながら、これは半無限深さの液状化地盤が無限に続く場合であり、実際には液状化した地盤の深さや長さと波長の比が大きく影響すると考えられる。
ミシシッピデルタのような柔らかい粘土地盤を人工的に造れば、理論的には消波が可能である。ただし、消波に適した柔らかい粘土がどこにでもあるわけではないこと、粘土の特性によって消波能力が大きく変わるため、制御しにくいことなどの問題点がある。
一方、砂地盤の場合は地盤が硬い(せん断弾性係数が大きい)ため、海底摩擦と地盤への浸透によってわずかな波の減衰があるだけである。しかしながら、何らかの方法で地盤を柔らかくしてやれば、粘土と同様な消波機能を発生させることが可能と考えられる。そこで著者らは、砂地盤内にポンプで水を送り込み、間隙水圧の上昇によって砂を液状化させ、粘土地盤のように柔らかい状態にすることにより消波する方法を考案した。
3. 水理模型実験
3-1. 実験の方法
水理模型実験は、小型造波水路(長さ36m、幅0.48m、高さ1m)で行った。図−1は、この水路に設置した液状化消波システムである。水路内に設けた砂地盤層の長さは11.35mで、そのうちの4mを液状化の対象とし、地盤下に長さ4m、内径13mmのパイプを6本、水路の長手方向に平行に敷設した。パイプには直径2mmの穴を側面に3cmおきにあけてあり、一端はポンプにつながっている。また、途中に設けたバルブを用いて流量を調整できる。砂地盤の厚さは図に示した40cmの場合と20cmの場合の2種類で、間隙水圧計、波高計、砂面計等を用いて計測を行った。間隙水圧計は水路底面から高さ1,10,15cmに置かれ、底面付近のものは中央付近の二本のバイブの間にあり、パイプから4cm離れている。
実験では、波を作用させる消波性能実験に先立ち、液状化した砂地盤の特性を把握するための上向き浸透流試験も実施した。消波性能実験に用いた実験波は、周期1.00〜2.83sの規則波が中心であるが、不規則波についても実施している。

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Fig-1 Diagram of the Wave-Absorbing System.

3-2. 上向き浸透流試験
図−2は、パイプから水を供給したときの圧力と流量の関係を示すもので、横軸は流速、縦軸は動水勾配(間隙水圧/砂地盤の高さに相当する水圧、動水傾度ともいう)であり、この線の勾配の逆数が透水係数となる。また縦軸には体積の変化率も示している。ここで、動水勾配がある限度(限界動水勾配)以上のとき、砂は顕著な膨張を見せて流動化する。これはボイリングあるいはクイックサンドと呼ばれる砂の液状化現象の一つである。図には、吉見6)が実施した上向き浸透流試験結果による動水勾配と流速の関係も示している。通常の試験では動水勾配と流量はダルシー則にそって線形な関係を示し、限界動水勾配の圧力以上の上昇はなく、ボイリング状態となる。限界動水勾配icrは、基本的には水圧がその砂を持ち上げる限界であり、砂の湿潤密度ρtおよび水の密度ρwを用いて、次の式で求められる。

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吉見の実験ではρt=1.9g/cm3で、icr=0.9であり、動水勾配は0.038cm/sとなる。これに対して、今回の実験では砂の湿潤密度ρt=1,918/cm3で、icr=0.91であるが、実線で示した結果では、限界動水勾配の70%程度までは線形であるが、それ以上では一部でボイリングが発生しており、圧力の増加は頭打ちとなっている。これは、パイプによる給水では、水が砂地盤内にかならずしも一様に入っていないために、部分的なボイリングが発生したものと考えられる。本報告でいう液状化は、このような部分的なボイリング状態も含めており、完全なボ

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Fig-2 Results of Permeability Tests.

 

 

 

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